博士の愛した数式

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

「僕の記憶は80分しかもたない」
メメントっぽいですね。メメントは10分間でしたっけ。知らん。映画見たことない。聞きかじった知識。
えっと、80分のビデオテープのように、80分経つと、博士の記憶はどんどん上書きされてしまいます。登場人物は「博士」「私」「ルート(息子)」「未亡人」と、誰も固有名詞で呼ばれることがありません。ああ「ルート」は固有名詞かな・・・。あだ名でね。語りの「私」が「博士」に対し「ルート」に対し「未亡人」に対し、そして博士の愛する「数字」に対し、思ったことを感動を、素直に文字に載せている感じ。
登場人物は、みな優しい人たちばかり。途中まで「私」は「未亡人」と対立していて、その「未亡人」の思いは作中綴られていなかったけれど、なんとなく予測はできる。彼女も優しい人だ。
この本は読み終わった直後、弟にも「読め」と云って与えたのですが(笑)、あの子は泣かなかったって。あたいは泣きました。最後、「博士」の80分間のビデオテープは壊れてしまう。弟はそれが予測できたから泣かなかったらしいけど、私は予測できてても悲しかったわ。
「博士」のビデオテープが壊れたことで、何が変わったでしょうか?
「博士」が身につけていた夥しいメモがなくなりました。「博士」の記憶は、20年前から進まなくなってしまいました。「私」のことも「ルート」のことも、もう覚えていられない。
それでも「博士」にとって「ルート」はいつまでも庇護されるべき愛すべき者であり、メモに代わって博士の胸に輝く「江夏」は、やはり変わらぬ、「私」たちの根底にある、あふれるばかりの優しさなのだと思いました。
映画見たい。深津絵里主演ってだけでもう期待大。深津絵里好き。
ってゆうか、それを知っていてこの小説を読んだので、もう頭の中で「私」=深津絵里でした。彼女の、きらきらひかるのときに死者の思いを語ったような、あの訥々とした語りを思い浮かべただけで、涙できました。
ぴったりの配役だと思う。